『この世界の片隅に』を観た。 ※作品の内容をほんの少し含みます
戦争を体験したことがないので、一番類似の経験を照らし合わせているだけなのかもしれないけど、東日本大震災のことを思い出しながら観ていた。市民にとっては、自分とは関わりのないところから突然災厄が降りかかるという点で、実際に戦争と震災は似ているのかもしれない。
あまりにもたくさんの人に同時に災厄が降りかかるとき、人はつらいと言わなくなる。全然よくないことを「まだ〜だからよかった」という。震災のとき、後輩が津波で幼馴染を亡くしたにも関わらず「遺体が見つかっただけでもよかったです。」と言った。遺体が見つからないよりは見つかった方がいいだろうとは思う。でも、亡くした悲しみは軽くなったりはしない。どうか悲しんでほしいと願った。ただ、あのとき、正常に悲しむことができた人はどれだけいたのだろうか。
映画の中でも、大きな悲しみをさも「仕方ないのだ」と割り切ったように話すシーンがいくつもあった。道端の遺体を見て息子だと気づかなかったお母さんの悲しみは計り知れないはずなのに。
悲しみを持ち合って、どうにか抱えられる形にして生きていくんだなと思う映画だった。どうか、悲しいことが悲しめる世界でありますように。