みゆぷり日記

楽しいおでかけ、おいしいおやつ

決まったし伝えておくか、くらいの温度感で「3月から正社員になるよ」と母に告げたら、「泣きそうなぐらい嬉しい」と言われてびっくりした。アルバイトとして4年、契約社員として1年すでに勤めていたし、契約社員と正社員で条件の違いがあまりなかった。正社員にしていただいたことはとてもありがたかったけど、よかったなあ、というより、もっと価値を発揮できるようにならなきゃな、という気持ちが強かった。

母の言葉に内心大げさだなと思ったけど、そういえば、つい最近自分も似たようなことをしたと思い出した。

わたしは姉と同じ会社に勤めている。姉は去年癌になり、休職し、8ヶ月の闘病の後、復職した。

復職が発表され、姉が全社員の前に立った時、まったく歯止めがきかず号泣した。ああいう泣き方をするのは久しぶりだった。「戻れたんだ」という安心だった。起きたことはなくならず、背負ったものもあるけど、それでも、元いた場所に戻ってこれたことが、嬉しかった。病気と闘い、打ち勝つことで、人生の中でとても大事なもののひとつである、仕事をなくさずにすんだ。

私は、5年前、大学卒業と就職を目前に控え、被災した。故郷を離れ、京都に家を借り、アルバイトで生計を立てた。京都の生活の特に1年目は、経済的にも、精神的にも、まあまあつらかったのをうっすら覚えている。もうだいぶ忘れてしまったけど。

母は、もしかしたら、姉を見て泣いたわたしと同じように、災厄によって人生を損なわずに済んだことを安堵したのかもしれない。震災からおそらく3日、原発が水蒸気爆発を起こし建屋が吹き飛んだニュースを見た直後に私だけを京都に送り出した母は、その決断が誤りであったのではないかとずっと悩んでいた。

そんな気も知らず、京都に慣れ、同僚にも友人にも恋人にも恵まれ、さらに東京に移ってもなお人に恵まれ、私はそれなりにやってきた。大した成果はないけど楽しく生きてきた。

あのとき京都に行ってよかったね。今の会社に入れてもらえてよかったね。これからも自分の選択にそういってもらえるように生きたい。